関 係 性 を 超 え て 1 ・ 夢 の 中 の 父
父の認知症に対する、私の原点の文章。
父の認知症の症状がポツリポツリと出だした頃・・・思い返すと、あの頃の私には変わっていく父を受け入れることが難しかった。昔の父じゃない・・・!昔の父はあんなでこんなで・・・と、頭の中で昔の父と比較しては悲しくて切なくて辛かった。
昔の父ではない、今ある現実の父の症状が出るたび、悲しくなって一人泣いていることが多かった。この先、父はどうなってしまうのだろう?と、不安にかられることがよくあった。心動揺するあの頃の私は、変わっていく父に対して優しく接するということが出来ずにいた。自分の意志でそうなってしまうことを選んでいるわけではない父の行動を、咎めたり責めたりする自分自身を最後にはいつも責めていた・・・。
何故もっと優しく出来ないのだろう?何故もっと愛を持って接してあげられないのだろう? どうして、私は父の表面的な部分しか見ることが出来ないのだろう?
私には本質的なものを見る力がない・・・。誰に対しても、どこにいても、何があっても、奥底の本物を見ていたい!
だって、それしかないのだから!!
『私が変わらなきゃ!』
そう、自問自答する毎日だった。
その頃、私は夢を見た。
同じ年代の男性たちからいろんなことを言われいじめられて、上手く言葉が出なくて言い返せず、泣きながら母に助けを求めていく父の姿の夢だった。夢の中の父は子供のように無防備で、でも入れ歯をガクガクさせたすごく年寄りで、とても弱々しく泣きじゃくっているだけだった。本当に本当に悲しかった・・・夢を見ながら私は泣いていた。
でも、この夢を見た日から、私は変わっていく父を必死に受け入れようとしてきた気がする。夢の中のような父が、いつか本当に私の目の前に現れたとしても、夢の中のような悲しい気持ちには絶対なりたくなかった。
【生きているだけで価値がある!】
そのままありのままの父を愛したかった、受け入れたかった。
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