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  台 所 = 冷 蔵 庫


 父はいろんなものを隠すし探し出す。そして、隠しては忘れ、探し出しては移動させる。今ここにあったはずの『物』が一瞬にして消えて無くなっている、なんてことは日常茶飯事である。
 小さい子供が相手なら、背丈に合わせてその目や手の届かないところに『物』を置けるし隠せるが、大人の父が相手ではそうもいかない。私たちが苦労して父の目に触れないようにした(隠した)『物』を、父それなりの知恵を絞って(動物的嗅覚を使って?)、まるでゲームを楽しむかのように『宝探し』をする。それがまた、しっかりと掘り当てられてしまうのだ!(特に、母の隠し方は「抜かり」ばかりで詰めが甘〜い!)
 夜寝るときに外して置いていた父と母のメガネ。次の日の朝には無くなっている。私たちの知らぬ間に、ほんの一瞬の間に、父はそれらを移動させるスゴ技を持つ。
 探し回る私たち・・・見つからない。そのうち躍起になる・・・そして疲れる。何度そんなことがあっただろう。
 だから私は、父がめったに立ち入らない場所である台所に、メガネを置く(隠す)ことにした。
 「お母さん、メガネ台所に置いてるから」
すると母は、「え!冷蔵庫!?」
 『メガネ冷やしてどうする気やのん!』とツッコム私。
 ある日、散歩からの帰宅後、母の黒色マフラーが玄関に放り出されたまま、ちゃんと仕舞われていなかった。『黒』にご執心の父、黒いものは全部自分のものだと思ってしまい、異次元空間の自分の引き出しに仕舞い込んでしまう。
 なので私は、父に気付かれる前にマフラーを台所に置いた(隠した)。
 「お母さん、マフラー台所に置いてるから」
すると母は、「え!冷蔵庫!?」
 『マフラー冷やしたらこの時期さっぶいやろな!』とツッコム私。
 どうも母の頭の中には、【台所=冷蔵庫】という方程式があるようだ。

      


 
   
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