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  十 人 十 色


今回の出来事が起きる頃、私は心の中でこんな風に思い始めていた。

様々な人たちが、様々な理由から、この場所へと集まって来ていた。
私はそんな全ての人が、何かしらの代表選手なのだと思えるようになっていた。
近寄りがたい世界を持ち、そこから発せられる不可思議な言葉で自分を表現している人も、それはその人の『個性』なのだと思うようになり、またそれがその人の『使命』に繋がっているのだと、私は思えるようになっていた。

それに、私自身に起きている様々な出来事も、私自身が選び望んだことであり、そういった事が私の『個性』であり『使命』であるならば、そしてそれが全てのものにとって役立つのであれば、今こうして生きていることが、とても幸せだとも感じ始めていた。

元々、私のどこかでは【選ばれた者】という意識を漠然とは感じていた。
しかし、常に『どうして私が・・・?』という思いが、そういったことを否定していた。
【与えられた使命】といったものも、「そんな大それた・・・」といった具合に、自分の人生や役割そして『個性』までも結局は肯定しきれずにいた。

夢で見た役選びのように、自分が何かしらの選択をし望んで役に徹するのには合点がいった。
でも、神から【選ばれた者】である【人類の代表】や与えられた【使命】などといった具合のものには、私はひどく違和感を持って反応した。
自分だけが神から特別に選ばれた如くの【選民意識】は、私の心を落ち着かないものにした。

例えば、街中に立ち大勢の人たちに紛れ込んだ私は、「こんなに大勢いる中の【私は選ばれた者】・・・」そう考えると、気が遠くなりそうでクラクラと目眩を感じた。
【選ばれた者】という意識を私は持て余し、あくまでも普通にごく自然に自分の中に押しとどめることは、なかなかすぐには出来なかった。

私は結局のところ、大いなる全てすなわち神と自分自身を切り離し、神と自分とを遠く離れた存在として分離させていたのだ。
だからこそ、自らの意志で選んだ役やそれに関わる『個性』や『使命』は受け入れられても、神から【選ばれた者】である【人類の代表】や与えられた【使命】などに対しては抵抗を感じたのだった。

それに、「私は神である」そうはっきり宣言出来るほどに至ってはいなかった私と同じく、私は私以外の人にも「あなたは神である」と宣言出来ていなかったのだ。
【選ばれた者】というのは決して特別なものではなく、誰もがその一人なのだと、自分の内に収めることが出来たのはしばらく経ってからのことだった。

自分自身が「私は神である」「神自身」なのだと、認め、受け入れ、宣言出来たとき、初めて『私は【人類の代表】であり【選ばれた者】であり、私の人生は個性は私の【使命】である』そう言うことが出来るのだと思えた。
そしてまた、全ての人間一人一人が【人類の代表】で【選ばれた者】なのだった。

私に起きた今回の出来事は、私も皆と同じく何かしらの代表選手としての【人類の代表】であり【選ばれた者】であるということの確認。
そして、私もまた神と分離した存在ではなく、それ自身なのだという確信を深めるための出来事だったような気がした。

私の場合はこのような形での出来事で現れたが、それこそ一人一人に合った形や手法で、『あなたは【人類の代表】で【選ばれた者】である』という確認と確信を深めるための、十人十色の出来事がきっと現れるのだと思う。


 
   
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