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  人 類 の 代 表


【四人は人類の代表だ】
このメッセージは私に、あの【選ばれた者】という大それた選民意識のような心落ち着かない不安を思い起こさせた。

夢で見たように、G氏と少女Aには『男女の業を背負う』というそれぞれの大役がある。
B氏にしても、あの夢の様子から何かしらの中心的役割があるらしかった。
そういう彼らが、人類の代表で【選ばれた者】だというのは分かる。
しかし、どうして私がその中に入るのか?
私はすっかり混乱していた。

実際、彼らに「あなたは人類の代表だ」と伝えてみても、彼らは何ら抵抗なくその事を受け入れられているようだった。
その様子に、何故彼らは『どうして自分が・・・?』という私のような感覚にならないのだろうと、逆に不思議に思うのだった。
どんな風に考えても、私が四人の中に入るという(私が納得できる)理由は全く見つけられなかった。

四六時中届けられるメッセージは、私の頭の中を片時も離れずグルグルと駆け巡り続けていた。
いっそのこと、私はそのメッセージを無視しようと思った。
しかし、ある朝、たくさんの人々と共に祈りを捧げている最中、またしてもあのメッセージが私に届けられ、そのことだけで私の頭の中はいっぱいになってしまった。
あまりにしつこいメッセージに私はそうそう無視をしていられなくなり、目には見えないメッセージの発信者に思わず訴えかけた。

『それなら証拠を見せろ!』
『私が人類の代表だというのなら、確固たる証拠を見せろ!』
そう苛立ちながら、私は心の中で叫んだ。
うるさいメッセージに混沌とし、立ちこめた靄に包まれたようになりながら私は、何度も『証拠を見せろ!』と繰り返した。

すると、しばらくして私の周辺の空気感が変わり、私は何かに覆われたような感覚になった。
それは、混沌とした中のモヤモヤした空気感ではなく、ピーンと張り詰めたしかもクリアな重力のような何とも言えない不思議な感覚だった。
そして、同じ部屋にいるたくさんの人たちの祈りの声に紛れて、突然、その答えはやって来た。

『 ― 血液型 ― 』
それは、周りに聞こえる人々の声とは明らかに違っていた。
太く、しかし力強い優しさがあり、私の真ん中にドーンと伝わる大きな波のような声無き声だった。
見えないところから見えないものを伝って届けられたその声無き声は、私に向かって『血液型』と答えたのだ。 

『血液型』?
そう思いながら、その言葉を聞いた瞬間、私の全身には鳥肌が立った。
声無き声の正体も疑問だったが、それよりも早く『血液型』という言葉に対する分析が、すぐさま私の頭の中で始まっていた。

血液型の基本パターンは四つだ。
しかも、その人が持つ、生まれながらにして死ぬまで変わることはない型。
「A型」、「B型」、「O型」、「AB型」。

『もしも、この四つのパターンがそれぞれの四人に当てはまったなら・・・』
「G氏」に「少女A」に「B氏」に「私」。
『いやいや、でも、そんな偶然ありっこない!』
あれこれ考えながらも、結局私は確認するしかなかった。

血液型占いなどと称して、私は自分以外の三人に血液型を聞いて回った。
一人目のB氏は、私とは違う血液型だった。
二人目の少女Aも、私とB氏とも違った血液型だった。
『ここまでは、たまたまが重なっただけ!偶然、偶然・・・!』
そう自分に言い聞かせながら、私は最後の一人であるG氏の血液型を聞きに行った。

なんと・・・G氏も他の三人とは違う血液型だった!
ゆえに・・・四つが揃ってしまったのだ!!
偶然が偶然に重なってしまった!!!
・・・私は呆然とした。
・・・私の求めていた確固たる証拠は出揃ったのだ。

私が四人の中に入るという理由・・・。
私の訴えに答えた、どこからともなく聞こえた声無き声・・・。
こういった不思議な出来事自体に対して、私にはもう疑う余地はなかった。
私もやはり漏れることなく、【人類の代表】だったのだ。


 
   
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