50 

 

  役 選 び


ある日、私は夢を見た。
夢の中では、今度の舞台での役選びが行われていた。
そこは学校のような教室で、黒板の前には役名を書く先生が立っていた。
教室の中には、自分のやりたい役を選ぶたくさんの生徒たちが机を並べて座っていた。

生徒の中には小学生ぐらいの私がいた。
私の隣の席を見るとB氏が座っている。
そして、私の近くの席にはあの少女AとG氏が隣合わせで座っていた。
彼らもまた、私と同じように小学生ぐらいだった。

しかし、小学生と言っても一番年上であるはずのG氏は、そのままG氏の顔のままで皺もある。
小学生ぐらいには感じるのだが、決して若返っているわけではなかった。
背丈は確かに(感覚的には)みんな同じように感じたが、私を含めみんながみんな、顔はそのままの年齢通りの姿だった。
何だか変てこな感じだが、妙な違和感は不思議となかった。

そうこうしていると、先生がチョークを持ちながら「この役をしたい人?」と挙手を請うた。
黒板に書かれたその役名は、『男性の業を背負う役』だった。
「ハイ!」と手を挙げたのはG氏。
そして、少女Aが「ハイ!」と手を挙げて、『女性の業を背負う役』を選んだ。

私とB氏はそんな二人を見て、「あの二人ったら本当に真面目なんだから!」「あんな大変な役を選んで、ねえ〜!」と、おどけながら言い合った。
そして、そう言うB氏が選んだ役は、その舞台では中心となる役柄で、何だかんだと結構ややこしい厄介な役だった。
けれど、それは味わい深い役でもあり、とても面白い役でもあった。

私はB氏が選んだ役を見て、「えー!?そんなのするの?」と驚き呆れていた。
しかし、「仕方ないなあ〜!」「じゃあ、私はそれを手伝う役をしてあげるわ!」と、私はわざとらしい大きな溜息を付きつつ笑いながら言った。

教室の中でB氏と私は、明るくワイワイと騒ぐ、お調子者の目立つタイプの子供だった。
それとは対照に、G氏と少女Aはとても真面目な優等生タイプの子供だった。
それはまるで、陰陽くっきり分かれたカップルのように見えた。

夢の最後の方になり、配役の名を書いていく先生の姿がアップで見えてきた。
でも、何故だか胸のあたりから上の部分、肝心な顔がどうしても見えなかった。
ただ、ふくよかなイメージだけが、私には感じられた。
その教室で先生をしていたふくよかな人物も、やはり今度の舞台で『先生役』という役柄を選んでいた。
(後日談:この夢を見てから十年ほどが経ったころ、久しぶりに再会した知人と先生をしていたふくよかなイメージの人物の顔が、突如として重なった。知人は確かに『先生』と呼ばれる存在になっていた・・・。)

役選びの夢を見て目覚めた私は、やはり人間は自分の演ずる役を自ら選び生まれてくるのだと思った。
すると、私は頭の中にメッセージを感じた。
それは、【四人は人類の代表だ】・・・というものだった。
四人というのは、その夢の中に出てきた私、B氏、少女A、G氏のことだった。
私はそのメッセージに対し、『何言ってんだか・・・!?』と戸惑った。

全ての人が何かしらの代表選手だという思いを深めながらも、私は自分自身が【人類の代表】というメッセージにはうろたえた。
『どうして私が・・・?』の気持ちが私の内には根強くあり、そういった思いを手放せずにいたのだ。


 
   
 50 




 

 

虹色アーチトップページへ