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  『 男 』 と 『 女 』


ある時、私は聞こえてきた体験談に釘付けとなった。
それは、愛する人の借金のために、自分の身を粉にして働き、お金を集めていたという女性の話だった。
「俺を愛しているなら何でも出来るだろう!?」と言ってお金に行き詰まった彼氏は、女性に休むまもなく働かせお金を吸い上げた。
彼氏の言われるままに、女性は流れに身を任せた。
そうまでして彼氏を愛し、そしてそうすることが彼氏を愛している証なのだと思い、自分が彼氏を支えてあげたいとその女性は思ったのだ。

結果的に、女性は愛する彼氏と別れることになった。
どんどんエスカレートする彼氏に対して、『この人のために』として来た自分の行いが、自分自身を傷付け愛する彼氏をダメにしてしまっていたと気付いたのだ。

この女性の体験談に、B氏は男性の業的なものを強く感じていた。
愛をちらつかせた『男』が為す『女』への強要的で強制的な行為。
その業は、『男』である自分の業でもあるのではないかと、B氏は自分自身と重ね合わせた。
『男』として『女』であるこの女性に申し訳ないとさえ感じると、私に話しをしてくれた。

私は、この女性の体験談を聞きながら、少女Aのことを思った。
この体験談と少女Aを重ね合わせてみると、彼女の内に隠され抱え込まれた重苦しいものを、なんだか理解できるような気がした。
盲目的な愛に生きてしまう自分が、【汚れなき人間/清楚な女性】のように扱われることに抵抗する、罪の意識のようなものも分かるような気がした。
もちろん、少女Aの本当のところの内情は知らないが・・・。

でも、私はこの女性の中にそして少女Aの中に、私もまた女性の業的なものを感じずにはいられなかったのだ。
それに、私も同じ『女』として本当の愛と見間違えた行為を、愛を表現する相手である『男』に対し行ってきたような気がした。

【彼女の苦しみは私の苦しみ】
『何かを隠し抱え苦しんでいる、共通した苦しみ』
少女Aに感じた何とも言えない感覚的な思い・・・。
それは、『女』を通じた業的な何かを意味するのかも知れないと私は思った。

『男』と『女』の業。
それは『人類の業』でもあった。


 
   
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