『 わ だ か ま り 』
休日を利用して、友人の家へ遊びに来ていた私は、友人の前でも固まってしまった。
私の硬直の話を聞いた時から、その友人は何かを感じたのか「私の前では絶対ならないでね!」と言っていた。
恐いのか、気持ち悪いのか、偏見からか、友人がどういう意味からそんな風に言っているのかは分からなかったが、自分の意志でなるかならないかを選べない私にとって、そんな風にお願いされてもどうしようもなかった。
そして、友人の不安は的中した。
友人の前で、突然私の体は重くなり硬直してしまったのだ。
友人は、驚きうろたえた。
私にも何の意味があって友人の前でこうなるのか、全く見当がつかなかった。
とにかく、私の体の呪縛を解き放てる者は、私の前にいる友人しかいないのだった。
友人に私の手を握ってもらい、静かに『愛』の心を送ってもらった。
すると、しばらくして友人が突然しゃべり始めた。
その内容は、友人の心の中にあった、私に対する諸々の『わだかまり』だった。
次から次に言葉が放出される友人のその様子は、奥底の意識に【勝手にしゃべらされている】そんな風な感じだった。
同時に、それに逆らおうとする表面意識での友人の思いも感じ取ることが出来た。
『こんなこと言っちゃいけない!』そんな友人の声が本当に聞こえてきそうだった。
やがて、友人の口から私に対する『わだかまり』の思いが語り尽くされた瞬間、私の体は硬直から解き放たれた。
友人を見ると、まるで自分が神懸かりにでもあったかのような顔をし呆然としていた。
私はというと、友人から語られた内容に普通ならショックだっただろうな・・・などと思いながら、でも友人の『わだかまり』の思いを、不思議とすんなり受け止めることが出来ていた。
正直なところ、私に対して『わだかまり』として友人が持っていた内容に、私自身頷けるところがあったからだ。
こんな形で聞かされるとは思わなかったが、逆にこんな形だったからこそ、私は素直にそれを受け取ることが出来たのかも知れない。
友人にとっても、なかなか私に言い出せない『わだかまり』を払拭できたことは、きっと良かったのだろう。
『わだかまり』は『心の壁』と成りかねない・・・。
私としてはそんな思いを抱きながらも友人関係でいてくれたことや、私に対する『わだかまり』の思いを正直に語ってくれたことなど、心から感謝の気持ちを述べることが出来ていた。
きっと、今後は『わだかまり』無く、より良い友人関係が続けられるだろう。
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