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  三 角 関 係 ?


仄かな恋心をB氏に抱いた私は、『今どこで何をしているんだろう?』『今度はいつ出会えるのだろう?』などと、今まで気にもしなかったB氏を取り巻くさまざまなことを気にし始めた。
とりわけ、あの少女Aのことが無性に気になって仕方がなかった。
二人が会話する姿を見て感じた何か・・・。
その何かが、やきもちのような妙な気持ちを私に芽生えさせた。

しかし、B氏と少女Aとの間に何があろうと、私は二度と不倫と呼ばれるものに陥りたくはないと思っていたし、愛する夫以外に思いを寄せること自体、罪の意識を私に感じさせるものだった。
私は自分のことながら、B氏に対するときめきや恋心をどうしたものかと持て余していた。
けれど、ときめきを感じながら過ごす毎日は、私の心に潤いを与えてくれていたことも確かだった。

私は、これらのことをいい方へと考えることにした。
未だ私の中で浄化し切れていない数々のものが、今この場所を通して出ようとしているのだと・・・。
ここは、夫以外の人に対するときめきや恋心、それにまつわる嫉妬心や執着心など・・・なにしろ人の奥底に根を張るそういった部分を浄化してくれる、そんな場所なのだきっと! B氏は、そういった私の中の浄化すべきものを引き出してくれる、神様が私に与えてくれた化身なのだと・・・。
そう考えると、私の心は軽くなった。

『出すだけ出して、愛する夫の元へ早く帰ろう』そう思った。
そう思えると、B氏に対する恋心も純粋に楽しめるようになっていった。
もちろん、その時点では一方通行の勝手な恋心だった。
しかし純粋に恋心を受け入れた分、そうなるとあの少女Aのことがいっそう気にかかった。
やきもちのような思いが、ますます私の心の中で一人歩きした。
『少女AもB氏のことが好きなのではないだろうか?だったら、どうしよう!?』
そんなハラハラドキドキの心模様は、恋心丸出しの学生のようで自分でも苦笑した。

私は、少女Aが誰を好きだとか愛しているだとか、ましてや誰と付き合っているだとかなど、全くそういったことを知らなかった。
そのような会話をするほど親しくもなかったし、そんな間柄でもなかった。
ただ何となく、少女Aの心中には愛する人が確かにいる・・・そう感じられて仕方がなかった。
そう感じるがために、『少女Aが思いを寄せる相手はB氏なのではないか?』などと勝手に妄想し、私の心の中の嫉妬心は膨れ上がった。

思い余った私は、直接少女Aに聞いてみることにした。
すると、少女Aは「今自分が愛している人の名前は誰にも言えない」と答えた。
でも、言葉の端々から、少女Aの愛する人は私の知っている人だという事、そしてその人は独身ではないという事が読み取れた。
私が恋心を抱いたB氏も独身ではなかった・・・。
そして、その愛する存在のことで、少女Aがとても苦しんでいるということを私は感じた。
『何かを隠し抱え苦しんでいる』『私と共通した苦しみでもある』以前、少女Aについて感じた思いが甦ってきた。

結局のところ、少女Aの愛する人がB氏かどうかは断定できなかった。
しかし、いろいろな話をする中でB氏のことが話題にのぼると、少女Aは私にこう言った。
「彼とは前世から、何か深い繋がりがあるような気がするの」と。
少女AとB氏の間に一体何があるのか知る由もなかったが、少女Aのこの言葉は私の嫉妬心をさらに刺激した。
何故なら、私もB氏に対し全く同じように感じていたからだ。
私は何とも言えない気分になってしまった。



 
   
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