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  と き め き


さまざまな有意義な会話をB氏と重ねるうち、私にとってB氏との関わりは、そこでの生活の小さな楽しみとなり始めていた。
そんなある日、B氏が自分で描いたという絵を持って、私の所へやって来た。
それは以前、B氏から一度見せてもらったことのある絵だった。
絵を見たとき、私は「とても素敵だ!」と感じたままをB氏に伝えた。
私の感想に、B氏もとても喜んでいたようだった。
あの時のその絵を、私にくれると言うのだ。

突然の贈り物に私は驚いた。
そして、自分の内部に起きた予期せぬ出来事にひどく動揺した。
その時、私の心はときめいたのだ。
どうしてときめいたのか、自分でもよく分からなかった。
もちろん、B氏の方にはそんな私のときめきを反映する思いなど、全く持っていなかっただろう。
ただ、褒められた自分の絵を、褒めてくれた人にプレゼントしたかっただけだろう。
戸惑いを隠しその絵を受け取りながら、私はすぐさまそのときめきを打ち消した。
何事も起こらなかったかのように、その打ち消し効果はしばらく私の心の中で効いていた。

しかし翌日、B氏とバッタリ出会った瞬間、あの忌まわしいときめきが再び私の元へやって来た。
大切な用事のあったその日、いつもとは違う装いをしていた私に、B氏は「素敵だね」と軽く声をかけた。
そんな何気ないB氏の言葉に、私は気もそぞろに応えた。
瞬間、恋のキューピットやらの放した矢が、B氏とすれ違う私の後を猛スピードで追って来た。
私はそれを除けきれず、その矢に射られてしまった。
何かに射られたことを感じ取った私は、B氏の背中を見送りながら心の中で呟いた。
『え?何?この気持ち!?』

そしてその時、私は無意識に見つけていたのだった。
小さく輝く光を、B氏の胸の奥に・・・。



 
   
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