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  偶 然 の 一 致


そこでの生活が始まって間もなく、私はある本の内容にとても惹かれるものを感じた。
みんなが声を出しながら読むその本の内容が、何故だか私に語りかけているような気がして、自然と私の耳に聞こえて来た。
気になってその本は何かと尋ねると、そこの聖典ともいうべき本の1冊だと教えてくれた。
すぐに買い求め、読もうとするが何故だか気乗りしない。
結局しばらくの間、その本は開かれることなく扉の奥深くにしまい込まれていた。

その頃、『私はこの場所と何か深い縁で繋がっているような気がする』そう漠然と思い始めた。
『こんな所にいたくない!』そう思う私にとって、決して認めたくない感覚だった。
しかし、そんな思いとは裏腹に、私はそこで来るべき日のイベントの手伝いまですることになっていた。

そのイベントを明日に控えた前日、私はかねてから手に入れていたあの1冊の本を持ち出し、電車の中で読み始めた。
ページが先に進むに連れ、私が以前耳にした内容が一向に出てこないと気づく。
パラパラとページをめくり探してみるが、どうやらこの本では無いようだった。
『おかしいな・・・?ちゃんとこの本だと言ってたのに・・・』そんな風に思いながら、とりあえず読んでしまおうと続きを読み始めた。

乗り継ぎのため、私はホームのベンチに腰を掛けその本を読んでいた。
数十ページほど読み終えると、次の新しいページをめくった。
その瞬間、○月○日という【日付】が、その本の中に初めて登場した。
○月○日という【日付】に、私の視線は釘付けとなった。
そして、胸の鼓動は激しく波打ち、私は思わずその本を放り投げていた。

偶然?必然?何かの罠・・・!?
この本だと間違って教えられた(もしくはそう聞こえた)こと。
そして、私がその本を実際すぐに買ったこと。
買いはしたが、しばらく放置してすぐには読み始めなかったこと。
それらのことが、この【日付】のために計画されたものだと、私は感じずにはいられなかった。
そう、私がその本を初めて開き読み始めたその日の【日付】こそ、まさしく○月○日という同じ【日付】だったのだ。

そして、明日のイベント当日は奇しくも私の誕生日でもあった。
・・・偶然の一致・・・
この偶然の一致を機に、私にさまざまなことが起きようとしていた。



 
   
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