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  は  じ  め  に

 これは、田舎町にある我が家を舞台に、そこに暮らす4人によって繰り広げられた実話です。要介護3である認知症の父を中心に展開するお話しは、認知症というものが身近にない人にとっては、驚くような内容であり絵空事のように感じる部分があるかも知れません。しかも、父のような症状ばかりでなく、認知症患者によってその症状の現れかたは実に様々であり、一般常識の枠内では収まりきれないものが多々あります。

 現在、日本での認知症患者は200万人を超えているらしく、今後も加速の一途を辿ると言われています。数字に疎いそんな私でも、認知症患者の今後の増加については危機感を持ってひしひしと感じています。
 私は、認知症は現代病であり、またその最たる象徴であるとも感じています。したがって、今までの常識枠や価値観を持って生活している限り、今後もやはり増え続けるのではないかと考えています。認知症患者が増加するということは、認知症患者に接する人たちも増えるということであり、その対応の難しさに頭を抱え、悩み、悪戦苦闘する、そういった人たちも今後増えるであろうということです。私はどちらかと言うと、この認知症患者に接する側、介護や対応する側の苦労を思うと、大きな危機感を感じてしまうのです。

 なぜなら、常識枠を超えた人たちに、常識の枠内で対応することはほとんど困難だからです。認知症患者と共に生きるには、自分が【常識外し】をして、常識の枠を超えないとやっては行けません。自分の今までの考え方や視点を変え、惰性的で慣習的な行動を変更し、自分自身が常識枠を脱ぎ捨てて【常識外し】をするしかないのです。愉快な認知症の父は、そういったことを私たちに促し導き、今もなお実践させてくれています。
 今までとは違う新たな価値観で父を見つめたとき、そこには人間の本質・本来の姿がありました。そういった価値観は、認知症患者にとどまらず全ての人や出来事を、本質的な中心部分で見つめさせてくれます。この本が、あなたの新たな価値観の扉へ繋がることを願って・・・。

                                         「2010年春   我が家にて」


 
   
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