特別な存在
私がここで受け取り感じ取る内容は、私のためだけの導きではなく大きな意味では人類のための導きだと、私は思うようになっていた。
この頃の私は、無意識に感じるこれからの行く末に対して、「全てを拒むことなく受け取ります」「逃げません」などと神に宣言し、ノート(紙)に綴っていた。
そして、自分が感じたことをB氏に伝え、そのことを互いに理解し共有できることが、とても楽しく嬉しく思うようにもなっていた。
そしてこの頃、B氏にも変化が訪れていた。
B氏自身の奥底に眠っていた様々な課題が浮き彫りとなり始めていたのだ。
彼自身の浄化されるべき事柄が掘り起こされ、濾過する必要が迫られていた。
濾過とは、奥底に眠る(あるいは眠らせている)業的な課題や問題を表面化させ、それを認め理解し感謝し浄化すること。
ほとんどの場合が誰でもそうだが、みんな濾過装置となる『特別な存在』がいる。
自分の内にある、触れたくない部分を素直に正直に表明できる相手、そんな『特別な存在』。
私は以前感じた、彼の胸の奥にある小さく輝く光を思い出した。
それは、私が恋のキューピットに射抜かれた時、無意識に見出した光。
その光とはB氏の私に対する「ときめき」だった。
彼にとっての濾過装置となる相手が、おそらく自分であることを複雑な気持ちでもって私は感じていた。
「神の御心のままに」「我の心で私が動きませんように」そうは祈っていても、B氏に対して感傷的で我欲的な『特別な存在でありたい』と願う心が湧いてきては、私を苦しめ冷静さを失わせることもあった。
自分のうちにある女郎的気質も相まって、感情的な側面にとどまらず肉体的な側面からも、我欲的な思いが起こっては私を惑わせた。
そんな中で、B氏にとって我欲ではない神の御心に適った『特別な存在』として、本当に私が冷静に役割を果たすことが出来るのか?
それに、そんな風に感じていること自体、本当に正しいことなのか私には判断できなかった。
その上、B氏自身も理性を保とうとするばかりで、自分の心の奥にある私に対しての「ときめき」に、気付かないふりの態度を取り続けていた。
やがて、B氏は彼の中の気付きや意識の目覚めを促され、彼自身の変革という産みの苦しみを感じ出した。
そうこうしているうちに、B氏はあえて私を遠ざけ、濾過装置となる相手をあちらこちらにと探し始めた。
私に対するよそよそしい態度のB氏を見ながら、それはそうだろうと私自身も納得してはいた。
得体の知れない関係になることなど、B氏は望んでいなかっただろうし、私とていわゆる不倫と呼ばれる関係には、もう二度と誰とも陥りたくなかった。
けれど、弱り切ったB氏が他の女性に甘えるように話している姿を見ると、私は自分の乳飲み子を取られたような気分になった。
与えるべき乳は十分張っているのに、自分の腕の中に我が乳飲み子がいない。
甘えるべき相手をB氏が間違っているように感じて、私は違和感を募らせていた。
「乳を与える母親」と「乳を与えられる乳飲み子」。
私はB氏との間に、そういった『特別な存在』関係があるように感じて仕方がなかった。
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