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  夫 の 告 白


「もう、これ以上やっていけない」。
夫と結婚して1年と数ヶ月、突然そう切り出され別居状態に入った。
何がなんだか分からないまま、毎日が涙の日々だった。
なんでも言うことを聞いてくれていた優しい夫が、一変して鉄の扉を持った冷たくて怖い夫に変わってしまった。
 
私との結婚生活において、いろんなことを我慢し犠牲にしてきたという夫の告白。
いつのまにか『〜ねばならぬ』の世界に入り込んでいたという夫の苦脳。
私との結婚生活で、『こうしなければ』『 ああしなければ』と、夫なりにいろいろと思いを巡らせて来たようだった。
本来自由な心の持ち主で、独り≠ニいう時間を楽しむことが、夫にとってとても大切なことだった。
しかし、私の執着心が夫の自由を奪い、私の独占欲が夫の時間を奪っていった。
 
私はというと、「結婚生活とは」「家族とは」と一般的な概念・常識に価値を置き、自分は当たり前の正しいことを言っているんだと、それから外れた夫の行動を責めたりしていた。
それでも・・・、夫は自分の思いを抑えそういう私に従ってくれていた。
けれど、私たちはいつのまにか、大切な個人としての境界線を失っていたのだ。
 
やがて、夫の中で何かが音を立てて崩れ始めていった。
これ以上私といると、自分が自分でいられなくなってしまう・・・。
自分が壊れるか私を切るか、夫は我慢しうる限界まで悩んでいたのだった。
そして・・・。
―― 離婚の決意 ――
 
私と同じように、夫と別居し離婚の危機を体験した友人に、自分の心の持ち方を見つめ直し、そして変える所だと教えてもらったのが、その場所だった。
嫌々ながらも辿り着いたその場所には、確かな真理があった。
私にはそう感じた。
決して自ら積極的に飛び込んだ所ではなかったが、今思えばそこから、私という魂の旅が本格的に始まっていたのだ。


 
   
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