お 風 呂 か ら の 逃 走
父は一人でお風呂に入れない。いつものように母と一緒にお風呂に入る。「今日はちょっと長めのお風呂だなあ〜」と思っていると、風呂場のほうから何やら騒がしい母の声がする。何事かと思い行ってみると、体から湯気を立てた父が風呂場から出ようとしていた。しかし様子がおかしい。体はビチャビチャ、頭はアワアワ。
背後から母が叫ぶ。
「急に上がるって言うて・・・まだシャンプーの途中やねん!流してないねん!」
「もう〜、ほんまアホになってもうて!!」
せめて下着は着なきゃと思ったのか、濡れた体にではあるがシャツはちゃんと着ていた。しかしよ〜く見ると、それは母のババシャツであり、下のほうに目をやるとおちんちんはブラブラ状態。そのままみみかのいる部屋へ向かおうとするので、
「お父さんパンツはかな!」と私。
すると、「なんでやーッ!」と父怒りモードに。
「なんでって、下見てみぃ。おちんちんブラブラやでえ!」と私。
そんな言葉に聞く耳持たず、『そんなの関係ねえ!』とばかりに父逃走。
〜どうして父がそのような行動をとったのか?〜
母によると、お風呂自体は気持ちが良かったらしく、今日は湯船にじっくりと浸かる時間も長かったらしい。湯船から上がったところを母すかさずシャンプーに持ち込もうと、「髪洗う?」の問いかけを父に。すると、父は「うん」と返事。しかし、髪を泡立てたその矢先、突然一連の行動に。
基本的に、父の「うん」と「ううん」はあまり当てにならない。長めのお風呂は高血圧の父にはきついらしく、のぼせたり不快の原因。体が危険を知らせたのだろう、『早くここから上がりなさい!』と。その指示通り父は本能のまま、とにかく外に出て体を快適な状態に持って行こうとしたのだろう。
それにしても、濡れたままの体でおちんちんブラブラ状態で逃走する父の姿は、『ギャーッ!』とわめきながら裸で逃げ回り走り回る、小さな男の子の姿と重なって見えた。本能全開のときには、おちんちんブラブラ状態でも娘も孫娘も関係ないらしい。
体が不快な危険を脱し、理性が働いて気持ちも落ち着いた頃、「ココ、ココ」と言って父は自分の耳を指さしこちらに頭を傾けた。頭から流れてきたシャンプーが耳に入って気持ちが悪いらしく、それは『拭いてくれ』の要求でした。ハイハイ、拭いて差し上げましょう。シャンプーでヌルヌルする頭と耳をタオルでフキフキしてもらう、先ほどとは打って変わって大人しい父の姿がそこにはありました。
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